【老後のお金シリーズ PART5】
iDeCoの出口戦略と制度の詳細|やらない選択も「戦略」になる!
iDeCoを始めた理由と気づいたリスク
退職金が出ないなら…という思いからのスタート
「うちの会社、退職金出ないかもしれないから」。そう思って、夫のためにiDeCoを始めました。将来への備えとして、間違いではなかったと思っています。2024年の法改正で、退職一時金とiDeCoの一時金を10年以内に重ねて受け取ると、控除が“二重取り”できなくなる(正確には、一部しか使えない)と知ったときに、ふと考えました。「もし将来、夫の会社が成長して退職金が出るようになったら?」と。
自分には退職金がなくても、夫には将来の可能性がある
私はパート勤務なので、退職金が出る見込みはほぼありません。一方で、夫の会社は今は小規模ですが、将来的にどうなるかは不明です。
もし控除が重複して使えないなら、せっかく積み立てたiDeCoの節税効果も受け取り方によっては帳消しになるかもしれません。そう思ったのが、制度を深く知りたいと思ったきっかけでした。
「ロックされる」安心感と生活設計の違い
もともと私は、貯金よりも運用で少しでも増やせるなら、そちらの方が良いと考えていました。60歳まで引き出せない点も、「無駄遣いを防げる」と前向きに受け止めていたほどです。
我が家は借金もなく、大きな出費の予定も特にありませんでした。さらに、いざというときのための現金もある程度は確保しており、生活は安定していました。そのため、「資金がロックされていても特に問題はない」と思い込んでいたのです。
正直なところ、「急な出費なんて、そうそう起きるものではない」とすら感じていました。
ロック資金が裏目に出るケースもある
でも、住宅ローンや他の借入があるご家庭の場合はどうでしょうか。
万が一の事態で返済が難しくなったとき、iDeCoの資金が引き出せないことが、状況をさらに苦しくしてしまうかもしれません。たとえば住宅ローンが滞ると、既に設定されている抵当権により、最悪の場合は住宅が競売にかけられる可能性も出てきます。
このように、生活がかかっている場面で「資金があるのに使えない」というのは、想像以上に大きな問題だと気づかされました。
iDeCoは原則として60歳まで引き出せず、差押えの対象にもならないなど、資産保全の面ではとても頼もしい制度です。ですが一方で、急な出費に対応しづらいという点では、人によっては負担に感じる場面もあると感じます。
だからこそ、「絶対に引き出せない資金」という性質をしっかり理解したうえで、自分の生活や将来設計に合った金額で無理なく積み立てることが大切だと思うようになりました。
私自身、制度の仕組みや控除の仕方などを深く知っていく中で、「どう出して、どう使うか」という出口戦略の重要性を強く感じるようになったのです。
iDeCoの出口戦略がカギ!どう受け取るかが重要
積立中の節税メリットばかりが注目されるiDeCoですが、実は出口戦略の方が大事。受け取り方を間違えると、退職所得控除や年金控除の一部しか使えず、結果的に課税額が増えることもあり、新NISAより損になるケースもあるのです。
法改正とiDeCo出口戦略への影響
以前のiDeCoでは、「退職金とiDeCoを別々に受け取れば、それぞれに控除を使える」という理解が一般的でした。つまり、退職金が出ても問題なく、iDeCoも節税に役立つとされていたのです。
ところが、2024年の法改正により、受取時期が10年以内に重なると控除が“重複適用できない”というルールが導入されました。
iDeCo出口戦略を知らないと損するリスクも
そのため、退職金が将来出る可能性がある人にとっては、iDeCoの控除が一部しか使えなくなり、受け取り方を間違えると損をしてしまうリスクがあるのです。
すでに加入している人にとっては、「そんな制度変更、知らなかった!」と驚く内容かもしれません。また、これから始めようとしている人にとっては、「思っていたより複雑だな」と感じることでしょう。
とはいえ、制度をきちんと理解すれば、iDeCoはいまでも十分に活用できる仕組みです。重要なのは、加入のタイミング以上に「受け取り方=出口」をどう設計するか。
特に、制度改正前に始めた人が何も考えずに一括受け取りをしてしまうと、「え、話が違う…」と後悔する場面も出てきます。
だからこそ、これからのiDeCoは“出口戦略”こそがカギになるのです。
iDeCoってそもそもどんな制度?
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で積み立てたお金を自分で運用し、老後に受け取る私的年金制度です。
- 原則として60歳まで引き出せない(途中解約できない)
- 掛金は月額5,000円〜上限まで自由に設定可能(上限は職業によって異なる)
- 掛金は全額所得控除となり、節税効果がある
- 運用益は非課税
- 受け取り時には一定の控除がある
という3段階の節税メリットがある一方、「やめられない」「受け取りに税金がかかる」などの注意点もあります。
2024年改正と2026年施行ルールに注意
2024年に決まった改正では、「退職一時金とiDeCoを10年以内に受け取ると、控除が両方に使えない(重複不可)」というルールが新たに定められました。
この改正内容は、2026年から施行される予定です。
これにより、「退職金が出るかもしれない人」にとっては、出口戦略を立てずに一括で受け取ると、思わぬ税負担につながる可能性があります。
制度が複雑化する一方で、「知ってさえいれば損しない」仕組みでもあるため、正しい知識がますます重要になってきます。
iDeCo出口戦略:一括受け取り vs 年金受け取りの違い
たとえば、月2万円を20年(年利5%)で積み立てた場合:
一括で受け取った場合(退職所得控除が使えない前提)
- 運用総額:約825万円
- 税金:約168万円
- 実質受取額:約658万円
- 積立中の節税:約144万円
- 合計価値:約802万円
年金形式で20年に分けて受け取った場合(公的年金等控除あり)
- 実効税率を10%と仮定
- 税金:約41万円
- 実質受取額:約784万円
- 積立中の節税:約144万円
- 合計価値:約858万円
結論:一括受け取りは、受け取るタイミングによっては退職所得控除が適用されず、結果として新NISAを利用していた方が最終的に多く受け取れた…というケースもあるため、注意が必要です。
なお、年金形式で受け取る場合も、公的年金等控除には年齢や年金受取額、他の年金との合算などによって有利・不利が分かれることがあります。
受け取り方法は、「節税シミュレーション」とセットで考えるのが安全です。
■おすすめのiDeCoシミュレーター:
制度改正後のiDeCo出口戦略:減額という選択
制度改正の内容を知ったとき、「いっそiDeCoはやめて、新NISAだけに切り替えようか」と本気で考えました。
しかし、iDeCoは一度始めると原則として解約できず、資金を60歳まで引き出すこともできません。掛金を0円にして停止することはできますが、その間も口座維持手数料は発生し続けます。
そこで私は「完全にやめることはできないなら、最低限だけ続けよう」と判断し、それまで月2万円だった掛金を月5千円に減額しました。その分の積立は新NISAに回すことで、資金の自由度と将来の選択肢を確保しています。
このように、iDeCoは柔軟に解約できない制度だからこそ、途中で調整できる仕組みを理解し、制度ごとにうまく役割分担をさせることが大切だと感じました。
まとめ:iDeCoは“受け取り方”で命運が決まる!
iDeCoは制度として強力ですが、受け取り方やライフスタイルによっては「やらない方がマシ」なケースもあります。
でも、逆に年金形式で計画的に受け取るなど、制度をうまく使えば、新NISAよりも得になることもあります。
iDeCoは「やる or やらない」の判断だけでなく、「どう受け取るか」「何に備えるか」まで含めて考える制度。出口戦略を意識して、自分に合った活用をしていきましょう!
👉次回は、「iDeCoと新NISA、どっちが自分に合っているか?」をテーマに、それぞれの制度の特徴と向き不向きをやさしく整理していきます。