【老後のお金シリーズ PART2】
サラリーマンの老後資金は大丈夫?企業年金・企業型DC・退職一時金をやさしく解説
【結論】会社によって老後のお金の差が出る!まずは自分の会社の制度を知ろう
「うちの会社は退職金が出るから安心」と思っていませんか?
しかし、今の時代、退職金制度があっても、その中身は会社によって大きく違います。
また、最近は「企業年金」「企業型DC(確定拠出年金)」など、昔と比べて制度が複雑になり、自分で運用する時代にもなっています。
そのため、自分の会社の制度を正しく知ることが老後資金準備の第一歩です。
【企業年金・企業型DC・退職一時金の違いを整理】
まず、会社が用意する老後資金制度は、次のように整理できます。
① 企業年金(公的年金[国民年金・厚生年金]に上乗せする「3階部分」の年金)
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【確定給付企業年金(DB)】
会社が将来の年金額を約束します。企業が運用・リスク負担をします。
現在、日本全体では約4%の企業のみが導入(主に大企業中心)。 -
【確定拠出年金(企業型DC)】
会社が掛け金を出しますが、運用は社員が選びます。
約2万社(約7%)が導入。
将来の年金額は運用成績次第で、リスクは社員が負担します。
原則60歳まで引き出し不可です。
② 退職一時金
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退職時にまとめて現金支給。
日本の約76%の企業が導入。
会社業績・寿命リスクがあります。
減額・カットリスクもあります。
これらをまとめて「退職金」と呼ぶこともあります。
しかし、実際は中身もリスクもまったく違います。
【退職一時金をもっと詳しく】
【退職一時金とは】
長年の勤労に対する報奨金として、退職時に一括で会社から支給されるお金です。
つまり、老後の生活資金や資産形成において、重要な役割を果たします。
【退職一時金の平均額と相場】
例えば、次のようなデータがあります。
属性 | 平均退職一時金(定年退職) |
---|---|
大企業(大学卒・総合職) | 約2,858万円 |
大企業(管理・事務・技術職) | 約1,896万円 |
中小企業(大学卒・総合職) | 約1,323万円 |
高校卒(現業職) | 約1,183万円 |
国家公務員 | 約2,147万円 |
地方公務員 | 約2,268万円 |

➡ 企業規模が大きいほど、勤続年数が長いほど、退職一時金は高くなる傾向があります。
【退職一時金の支給有無】
なお、退職一時金制度は法律で義務付けられていません。
そのため、2022年時点で退職給付制度がある企業は**約74.9%(約4社に1社はなし)**となっています。
【退職一時金の税金】
退職一時金は「退職所得」として課税されますが、退職所得控除が適用されるため、他の所得より税負担が軽くなっています。
勤続年数 | 控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 × 勤続年数 |
20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年) |
➡ (退職金額-退職所得控除額)×1/2 が課税対象です。
※勤続5年以下の役員等は除きます。
【企業型DCをもっと詳しく】
【受け取り開始時期】
企業型DCは、次のようなルールがあります。
-
通算加入期間10年以上→60歳〜70歳で受給開始自由
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10年未満→61〜65歳に繰り下がり
【受け取り方法】
-
一時金(まとめて受け取る)
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年金(分割、5・10・15・20年から選択可)
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併用も可能
➡ そのため、受け取り方で税金も変わるため、ライフプランと税負担を考慮して選ぶことが大切です。
【退職後の手続き】
退職後は、企業型DCの資格喪失となります。
その場合、転職先に企業型DCがあれば移換可能です。
しかし、転職先がない・無職ならiDeCoへの移換手続きが必須です。
この手続きを5〜6カ月以内に行わないと、自動的に国民年金基金連合会へ移管、運用停止リスクありです。
【よくある誤解】
「会社が出してくれるから放置しても大丈夫」と思っていませんか?
しかし、実際には運用先を選ばず放置すると、利回りの低い商品で自動運用され、老後資金が思ったより増えないリスクがあります。
そのため、企業型DCがある人は、必ず運用先を自分で見直しましょう。
【転職時の注意点】
最近は転職が当たり前になっていますよね。
しかし、単に今より給料が高いという理由だけで会社を選んでしまうのは危険です。
たとえば、退職一時金や企業年金などの福利厚生が手薄な会社に転職すると、生涯収入では差がつくこともあります。
【シミュレーション:転職による退職一時金と企業年金の差】
-
【A社(退職一時金あり・企業年金なし)】
年収500万円、退職一時金:勤続30年で1,500万円 -
【B社(企業型DCあり・退職一時金なし)】
年収550万円、企業型DC掛金:月2万円(30年で約720万円拠出、運用次第で±あり)
➡ たとえば、B社では年収は高く見えますが、退職一時金がゼロなので、定年後のまとまった資金は企業型DCの運用結果次第。
一方、A社では退職時に1,500万円が確実に手元に入るため、計画的な老後資金を準備しやすいという特徴があります。
このように、給料だけでなく、老後資金を含めたトータルの福利厚生まで含めて転職先を選ぶ視点が大切です。
そのため、転職前には必ず福利厚生の詳細を確認しましょう。特に退職一時金や企業型DCの有無・内容は要チェックです。
【よくある落とし穴】
たとえば、あなたの会社が企業型DCを導入している場合でも、実際に自分で証券口座を見たことがないという人は多いものです。
実際には、社員に通知はされていますが、気づかずに長年放置してしまっているケースもあります。
つまり、会社が掛け金を出してくれているのに、利回り0.01%の定期預金で20年放置されていた、ということも珍しくありません。
➡ だからこそ、企業型DCは自分で気づき、自分で管理する時代。
【まとめ】サラリーマンの老後資金は会社の制度確認から
制度 | 特徴 | リスク |
---|---|---|
退職一時金 | 退職時にまとめて受け取る | 寿命リスク・会社業績リスク |
企業年金(DB) | 会社が将来の年金額を約束(企業が運用・リスク負担) | 会社破綻リスク |
企業型DC(DC) | 会社が出す掛け金を自分で運用(社員がリスク負担) | 運用成績次第・元本割れリスク |
➡ そのため、まずは自分の会社の制度を確認し、企業型DCがあるなら放置せず運用先や受け取り方を選ぶことが、サラリーマンの老後資金準備の基本です。
次回は、個人事業主・フリーランスの老後資金対策をやさしく整理します。
会社員とは違い、すべて自分で準備する老後資金。
どんな制度をどう使えばいいのか、パート主婦目線でわかりやすく解説します。
👉 個人事業主・フリーランスの老後資金対策!iDeCo・小規模企業共済を徹底比較(PART3)
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